侍ジャパン、決勝戦は快勝で初代王者に輝く 山崎武司氏「これからが楽しみ」

2017.11.20

野球日本代表「侍ジャパン」は無傷の3連勝で「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」を制し、初代王者に輝いた。19日の決勝戦は、初戦で延長10回の大熱戦の末に勝利した韓国に7-0で快勝。先発の田口麗斗投手(読売)が7回3安打無失点6奪三振と快投し、打線も4回以降に着実に点を加えた。

写真提供=Getty Images

写真提供=Getty Images

韓国撃破し無傷の3連勝でアジア王者「勝ったことは素晴らしい」

 野球日本代表「侍ジャパン」は無傷の3連勝で「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」を制し、初代王者に輝いた。19日の決勝戦は、初戦で延長10回の大熱戦の末に勝利した韓国に7-0で快勝。先発の田口麗斗投手(読売)が7回3安打無失点6奪三振と快投し、打線も4回以降に着実に点を加えた。

 現役時代に通算403本塁打を放ち、本塁打王2度(1996年、2007年)、打点王1度(2007年)の実績を誇る野球解説者の山崎武司氏は、田口の投球、大会MVPに輝いた外崎修汰外野手(埼玉西武)の打撃、そして初陣で日本を優勝に導いた稲葉篤紀監督の采配を称賛。「勝ったことは素晴らしい」としながら、「世界を獲るんだったら満足していてはいけない。大勝だったけど、もっと完勝してほしかった」と期待も込めて厳しい言葉を送った。

 運命の決勝戦。先発の田口は初回1死から死球を与えるも、後続を断って無失点。2、3回は3者凡退に抑えると、4回は2死から4番キム・ハソンに二塁打を浴びながら、続くキム・ソンウクを一邪飛に仕留めた。待望の先制点をもらった直後の5回は2死から連打で一、三塁とされたが、パク・ミンウをニゴロ。味方が加点する中、6、7回も無失点に抑え、108球の熱投でマウンドを降りた。

 山崎氏は「田口選手は抜群の制球力で、インコースに投げ込んでアウトを取っていました。本当に素晴らしいピッチングでした。韓国代表の1番打者にもインコースに投げたら全然反応しきれていなかった。あのくらい思い切って内角を突いてくると、球が速くなくても抑えられるというのを田口選手は見せてくれた。繰り返しになりますが、素晴らしかったですね」と絶賛。日本の投手力の高さをあらためて見せつけたと評価した。

 さらに、2試合連続の先制打を放つなど、2本のタイムリーで存在感を見せた外崎についても称賛。「何と言っても、今日は外崎選手のヒットで勝ったようなもの。打ったことは当然、評価できますが、私が感心したのは1打席目のフォアボールです。完全に相手ピッチャーを見切って、見逃していた。自分の懐まで引きつけて反対方向、というふうにボールを長く見て、見極めをしていた。これはすごく状態がいいなと思いました。もちろん、ライトオーバーの先制打も素晴らしかったですし、その次の打席もインコースの厳しいボールを回転してレフトにタイムリーを運んでいた。今回の外崎選手のバッティングを見たら、MVPは当然だと思います」。稲葉監督に大きくアピールした選手の一人だと言えるだろう。

山崎氏が称賛した稲葉監督の采配、あえて挙げた課題

 そして、稲葉新監督の采配も、決勝戦で勝利を引き寄せる大きなポイントになったという。山崎氏が挙げたのは、0-0で迎えた4回の場面。先頭の山川穂高内野手(埼玉西武)が四球で出塁すると、続く上林誠知外野手(福岡ソフトバンク)の犠打を相手捕手が二塁に投げるもセーフ。野選で無死一、二塁とチャンスを広げた。ここで打席には外崎。送りバントも考えられたが、稲葉監督は外崎に打たせて、結果的に先制タイムリーが生まれた。

「稲葉監督は冷静に采配していたんじゃないかなと思います。4回無死一、二塁になったときに、ゲームの流れとしては『なんとか先制していこう』『流れを手繰り寄せたい』というところで、バントさせるのかなと思ったのですが、好調の外崎選手だからということで打たせて、選手がその期待に応えました。あそこは稲葉監督の采配がズバリ当たりましたよね。普通であれば、バント、バントで行く雰囲気だった。でも、それをあえて外崎選手の状態を見て、稲葉監督が打たせた。いい采配でした。あそこは本当に難しい判断だと思いました。『稲葉監督はどうするのかな』と思っていましたけど、1球目からバントの構えもしなかった。2球ボールのところでバントもありかなと思って見ていましたけど、そこでもしなかった。その結果、外崎選手が打ちましたからね」

 勝利を手繰り寄せる上で、重要な“一手”となった。ただ一方で、山崎氏は「課題もたくさん見えた」と指摘する。結果だけを見れば快勝だが、期待が大きいからこそ、目につく場面もあったという。

「やはり若さが出てるところもたくさんありました。7点は取りましたが、打線はちょっと弱い。それはすごく感じました。韓国のピッチャーが良くなかったので、前半戦で点数が取れる場面がたくさんあったのですが、できなかった。それがこのU-24の“次期”侍(ジャパン)メンバーになると、これまでのメンバーと差が出てしまうので、詰めていかないといけないかなと。

 相手の先発はフォークボールが得意なピッチャーでしたが、あまりにもフォークをバッターが警戒しすぎて、ストレートを打てなかった。国際試合とか一発勝負は1イニングごとや“一人一殺”でピッチャーが投げてくるので、打てるボールを打っていかないとダメ。そのあたりがちょっと反省点かなと見ていました」

 期待が大きいからこそ、山崎氏はこの結果に満足するべきではないと訴える。「稲葉ジャパン」の目標はあくまで世界一。若き新指揮官と有望な選手たちが、経験を積み重ねて、強い日本チームを作っていってほしいと願っている。

「これから相手や大会のレベルも上がってきて、国民の期待も背負って、稲葉監督には色んな面でプレッシャーがかかってきます。幸いにも、日本には今、どんどん良い選手が出てきています。楽しみですよね」

 まずは幸先のいいスタートを切った新生ジャパン。ここから順調に成長曲線を描いてくれることを、山崎氏も願っている。


写真提供=Getty Images

【了】

記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images

NEWS新着記事