世界一になるために― WBC優勝メンバー馬原孝浩氏が語る「精神的支柱」の必要性

2017.10.23

稲葉篤紀新監督が就任した野球日本代表「侍ジャパン」トップチーム。11月にチャイニーズ・タイペイ代表、韓国代表が参加する「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」(同16日~19日・東京ドーム)で初陣を迎える。

写真提供=Getty Images

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馬原氏に聞く、侍ジャパン世界一へ必要なこと

 稲葉篤紀新監督が就任した野球日本代表「侍ジャパン」トップチーム。11月にチャイニーズ・タイペイ代表、韓国代表が参加する「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」(同16日~19日・東京ドーム)で初陣を迎える。稲葉監督率いる新生侍ジャパンが世界一になるために今後必要となってくるポイントはどこなのか――。2006年、2009年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表メンバーで2大会連続優勝に貢献した馬原孝浩氏に語ってもらった。

――2006年、2009年とWBCに出場されていますが、振り返るとどんな大会でしたか。

「2006年は行っただけでしたからね(石井弘寿の負傷離脱により、大会途中に急遽追加招集)。途中から合流して、行った時は準決勝だったので、もう出る幕はなく、という感じでした。ただ、WBCの代表の雰囲気というのは独特でした。アマチュア時代にも、日本代表になってユニホームは着ていましたけど、WBCのユニホームを渡されて袖を通した時の気持ちというのは、それまでとは違いましたね。めちゃくちゃ光栄じゃないですか。これを着て試合に出たらどうしようとか、あの舞台に立って投げるというところに、ワクワク感もあり、怖さもありました。かつ1番近くで試合を見られるのは選手冥利に尽きるので、いろんな思いがある中での2006年の大会でしたね」

――途中からチームに入った2006年の第1回大会。登板機会はありませんでしたが、チームに入る中での難しさはありましたか。

「あの当時は急遽の招集だったので、日本と気候も違うなども不安もありましたが、何が1番厄介かといえば、ボールが全く違う。ボールに対応する期間としては絶対的に足りなかった。アメリカに行くまでは普通に日本のボールで練習していましたから。変な開き直りはありましたけどね、『無理だろ』という。『点差が開いたら行くぞ』とは言われていましたけど、接戦、接戦だったので、純粋にすごいなって思って見ていましたね」

――ガラッと変わって、2009年の第2回大会は中心メンバー。本大会でも5試合に投げました。

「2009年は最初から選ばれていたのですが、(2006年大会以上に)不安とか怖さがすごく大きかったですね。イチローさんとかが注目され、日本国民が注目する中で、結構な試合数も投げました。期待、思いというのを色々背負いながら、その中で楽しみながらやりたいなと思っていました」

――やはり怖さはありますか。

「怖いですよ、やっぱり。日本代表のユニホームを着てああいう舞台に立つというのは怖さがあります。ただ、怖いというのはいい意味もあって、身が引き締まるというか、その分トレーニングも積まなきゃいけない、ケアもしっかりやらなきゃいけない。あらゆる選手のルーティンを見ることができて、すごく勉強になりました」

――第2回大会でのチームへのアプローチはどうでしたか。

「2006年と、メンバーがガラッと変わっているんですよね。杉内(俊哉)さんとか、松坂(大輔)さんとかがいて、気の知れた仲というか、そういう人たちがいて、あとはダルビッシュ(有)、田中(将大)マー君とか下の世代だった。自分は中堅クラスだったので、そういう意味ではやりやすい環境にはありましたね。すんなり入っていけるところはありました。最初も緊張せずに」

「日本のレベルは高い」、「イチローさんのような選手は絶対に必要」

――2大会連続での優勝を経験し、大きな大会で勝ち抜くことが出来た要因はどこにあったと感じましたか。

「日本のレベルは高いですよ。世界レベルで言っても、高いです。ただ近年はWBCにあらゆる国が力を入れてきていますよね。そこには絶対的に敵わない力、パワーの差というものがあると思うんです。2006年、2009年に感じたのは絶対的支柱であるイチローさんの存在。イチローさんがいたということが、かなり大きかったと思います」

――メジャーでも結果を残し、世界の超一流プレーヤーからも一目置かれていたイチロー選手は、やはり存在感が違う。

「整列しても、アメリカなどとは体格差は歴然としていますから。アマチュアでもそうですけど、体格が大きいと、相手を威圧するじゃないですか。でも、イチローさんがいたことで、精神的な部分で相手に勝っていたんじゃないかなと思います。アメリカ戦でも、なんかこう雰囲気に飲まれるようなことはなかったですね」

――イチロー選手を中心としてチームがまとまっていた。

「みんなが同じ方向を向いていました。団結力は日本人に、すごくあるもの。そういう団結力がないと勝てないと思うんですよね。他の国のように、個々が突出したチームがまとまるのは難しいので。かつ短期決戦なので、招集されてからの期間が短い。その間に1つになって、相手に向かって行く。それを指揮する監督が方向性を定めるというのが、僕はものすごく大事だと感じていましたね」

――相手の国をも圧倒出来る存在は、チームにとって必要でしょうか。

「イチローさんのような選手は、絶対にチームには必要だと思いますね。そういった存在は、今後も出てくるとは思いますけど、そういう選手がいる、いないでは戦い方が全然違ってくると思いますね」

【了】

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