今後も守り抜く「日本の伝統」 アジア制覇の侍ジャパン社会人代表、勝因は守備力

2017.10.10

侍ジャパン社会人代表が出場した「第28回 BFA アジア選手権」(台湾)。日本は予選ラウンド、スーパーラウンドと負けなしの5連勝で2大会ぶりの優勝を果たした。

写真提供=Getty Images

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負けなしの5連勝で2大会ぶりの優勝「試合を重ねるたびにそれぞれの役割がはまった」

 侍ジャパン社会人代表が出場した「第28回 BFA アジア選手権」(台湾)。日本は予選ラウンド、スーパーラウンドと負けなしの5連勝で2大会ぶりの優勝を果たした。主将の佐藤旭外野手(東芝)は「ホッとした気持ちでいっぱい」と安堵し、「試合内容よりも結果にこだわっていきたいということを伝えていた。結果的に5連勝で優勝して締めくくることができ、有言実行ができた。いいチームができたなと思う」と笑顔。石井章夫監督は「全員がよく機能した」と24人の侍戦士たちを称え、「試合を重ねるたびにそれぞれの役割がはまってきた」と振り返った。

 日本は予選ラウンドで香港とパキスタンと対戦した。当初の予定では、ここに中国も入っていたが、大会直前に出場を辞退。予選ラウンドは3試合から2試合に変更された。香港には30-0、パキスタンには13-1とコールドで圧勝。レベルの差があるため、この点差は当然の結果ではあるが、これは日本が手を抜かず、ゲームセットまで全力プレーを心掛けた成果だ。大差はついたが、ファーストストライクを積極的に打ち、個々が適材適所で役割を発揮した。石井監督は「(結果は)大味だが、ポイント、ポイントでいい攻撃ができた」と振り返る。

 スーパーラウンドではセミファイナルで韓国とチャイニーズ・タイペイに挑んだ。前回大会では、韓国とチャイニーズ・タイペイに連敗し、大会連覇が「5」でストップ。3位に終わるという屈辱を味わった。それだけに、ここに懸ける気持ちは強かった。

 セミファイナル1戦目は韓国と対戦。日本は相手投手に苦戦し、7回まで内野安打1本に抑えられた。守りでは先発・谷川昌希投手(九州三菱自動車)が7安打を浴びながらも粘り強く投げ、11個の三振を奪って8回を無失点。谷川の奮投に応えるように8回、日本は1死二塁で伊礼翼内野手(王子)が待望のタイムリーを放った。均衡が破れると、代打・神里和毅外野手(日本生命)、9番・北村祥治内野手(トヨタ自動車)にタイムリーが飛び出し、突き放した。

大会前には数々のアクシデントも「選手もそういった環境に順応していった」

 韓国に3-0で勝利したことで決勝進出が決定。チャイニーズ・タイペイとはセミファイナル2戦目とファイナルで2日続けて戦うことになった。お互いに試した面もあり、セミファイナル2戦目は日本が8回コールド勝ち。しかし、アジアチャンピオンを賭けた決勝は一転、韓国戦のように厳しい戦いになった。

 日本は4回に3番・藤岡裕大内野手(トヨタ自動車)が左前打を放つまで無安打に抑え込まれていた。それが5回、2死二塁から1番・田中俊太内野手(日立製作所)が中前に先制打を放つと、相手の失策と捕逸で加点。さらに北村がレフトへ特大のソロ本塁打を放って3点目。そして、2死一、二塁では相手中堅手の落球で2点を加え、一挙、5点を奪った。日本は6回にも1点を追加。先発・田嶋大樹投手(JR東日本)が5回を3安打無失点に抑え、2番手・渡邉啓太投手(NTT東日本)が1点を失ったものの、平尾奎太投手(Honda鈴鹿)が2イニングをゼロで切り抜け、最後は谷川が締めた。

 予選ラウンドから5戦全勝で2大会ぶりにアジアを制覇。中国の参加辞退、試合時間の変更など、当初の予定通りには進まないこともあった。開幕日には移動中にチームが乗っていたバスが他の車と接触し、会場到着が30分遅れた。投手の柱として期待された今秋のドラフト注目の左腕・田嶋が台湾入りした日の練習で送球を頭部に受けるなど、アクシデントがあり、予選ラウンドとスーパーラウンドでは参加国の力の差もあった。

 そうした中、全日程を戦い抜き、石井監督は「現地入りしてからいろんなことが起きすぎたが、逆に選手もそういった環境に順応していった。そういった部分でも非常に良い経験になったと思う」と環境に適応していった選手たちを称えた。

チームづくりで掴んだ「ある程度のヒント」、「日本の伝統である守り抜くという形」

 今大会の勝因は日本の守備力だろう。石井監督は「最後は守り勝つというのがテーマだった。投手陣を中心としたディフェンス。そういう意味では、谷川をはじめ、内野の二遊間をキーに、非常にいい形になったと思います」と振り返った。投手を預かる杉浦正則コーチも「予選ラウンドでしっかり慣らして準備をしてくれた。国際大会になると、先に点を与えてしまうとすごく苦しくなってしまう。そういう意味では先発ピッチャーがよく頑張ってくれた。(投手陣は)先発でも中継ぎでも抑えでも、どんな形でも期待に応えてくれた」と納得の表情を浮かべた。

 特に先発でフル回転した谷川や頼れるベテランの佐竹功年投手(トヨタ自動車)に対し、石井監督は「谷川はポイントだった。チームを勇気づけた。後ろに最高の守護神・佐竹がいるので安心して投げられたと思う」と話す。最後には田嶋もマウンドに立ち、「初戦はどうなるかと思ったが、間に合って良かった」と胸をなでおろした。

 前回大会で6大会ぶりに優勝を逃した日本にとって、今回はアジアNo.1になることが宿命だった。大きなプレッシャーをはねのけてつかんだ栄冠に主将の佐藤は「普段、厳しいトーナメントの一発勝負で戦っているからこそ、こういう場面で力を発揮できる選手が多いと思う。チーム力も発揮できた大会だったと思う」と頷いた。攻守に貢献した藤岡も「都市対抗などでもっと厳しい戦いがある。連戦でしっかり戦えたのはそういう経験も生きたのかなと思う」と話した。

 侍ジャパン社会人代表は、来年のアジア競技大会に向けて動きだす。「来年のアジア競技大会に向けたアジア選手権という位置付けで戦ったものの、もう一度、チームを再編しないといけないという状況が今後、待っている。このアジア選手権を制した内容を振り返ってみると、ある程度の戦い方のヒントをいただいたので、それを元に選手を選考し、強いチームを作れればと思います」と石井監督は言う。

 今大会の経験を生かし、最強チームを作る。「日本の伝統である守り抜くという形は変えずにいきたいなと思う。今度の日本選手権、それから11月?12月のウインターリーグの中で新たな選手を見出して、戦力になってもらいたい」と期待。アジア王者に返り咲いたチームが残した財産は、次のチームにつながっていく。

【了】

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